お箸の数え方
お箸は二本一組で「一膳(いちぜん)」と数えます。
この「膳」という漢字、非常に興味深いんです。
【 膳 】
部首:月(にくづき・にく)
音読み:ぜん
訓読み:そなえる
意味①料理をのせる台。「食膳」「配膳」
意味②とりそろえた料理。「膳部」「御膳」
意味③そな(供)える。
意味④食器に盛ったごはんや一対の箸(はし)を数える語。
にくづき・にく ≠ つきへん
腕、脳、腸、肌など身体の器官を表す漢字に多く使われる「月」は、「肉」という象形文字が変形して「月」になったため、「つきへん」とは別物。
元々は「やわらかい肉」を表した象形文字なんだそう。
にくづきを持つ「膳」は、”道具”という無機質なものを呼ぶ単位ではなく、体の器官や「それに近い機能を果たすもの」を数える単位と言えます。
お箸の優れた機能
お箸はつまむ、ほぐす、のせる、切る、すくう、さく、はがす・・など多くの機能があります。
それぞれが切る、刺す、すくうの単一機能しか果たさないナイフ、フォーク、スプーンとは異なり、指先の延長線上として多様な機能を果たすことが出来ます。
長い歴史の中で日本人は、お箸だけを上手に使って食事をしてきました。日本人は手先が器用と言われる所以でもあるでしょう。
お箸は日本人にとって第二の器官
体の器官として擬人化されたお箸を、普段意識することはありませんが、自分のお箸を、それがたとえ家族でも人に使われるのを嫌うのは、お箸を指先・手先以上の働きをする”第二の器官”としてとらえる民族性が、今も受け継がれているからではないでしょうか。
昔は、自分が使ったお箸には魂が宿るとも考えられていたため、山で木を伐ることを業としていた方たちは、木の枝を削ってお箸替わりにしてお弁当を食べたあと、必ずお箸を折ってから山に捨てたというエピソードもあります。
一膳のお箸を「一本」と言う方も多いですが、本来の「一本」ではお箸の機能を全く果たせない「棒」にとどまります。
お箸は二本揃って機能を果たせる「一膳」になりますので、正しく後世にもつなげたいですね。